スパイスラボ神部です。
既報の通り、2010年4月22日に、ソーテック社さんより「Amazon.co.jp: mixiアプリをつくろう!OpenSocialで学ぶソーシャルアプリ: 神部 竜二: 本
」という本を出させていただくことになりました!(ちなみにソーテック社さんは1974年7月設立で主にバリバリのビジネス書を出されている出版社です)。

この本は、初の単著になります。単著といいながら実は誰かに書いてもらったりしたわけでもなく、リアル単著です。着稿から脱稿までは、およそ5ヶ月間かかりました。
その間、ラボとしてのアウトプットは最小限になり、どんどん状況が変化していくソーシャルアプリの世界に置いていかれないように常に注意を払いながら、まさに昼も夜もない執筆体制で取り組むことになりました。そもそも本というものの執筆をするのは人生初ということもあり、初めてづくしのなかでさまざまな経験ができましたので、ブログエントリというかたちでかんたんにその過程を振り返ってみたいと思います。
本を書くことになった、そもそものきっかけ
2009年は、日本のソーシャルアプリ環境が花開いた年でした。2009年のはじめのgooホームのOpenSocial環境開発サンドボックス公開を皮切りに、夏のmixiアプリの正式公開、秋のmixiアプリモバイルの正式公開を経て、スパイスラボでもこれらの環境に対する様々なとりくみをしたり、実験的なものも含めると50近くのアプリをリリースしたりしてきました。そういったプラットフォーム展開が一段落した2009年10月、自分の中に蓄積された様々な知見を、なにかの形でアウトプットしたいと強く思うようになっていました。
一定量の知識のアウトプット、それに関してもっとも考えられるのは書籍です。しかし、それまで私はろくな雑誌連載も持ったこともなく、紙メディアに関してはまったくといっていいほど経験がありませんでした。それでも前には進みたいのでなんとか企画書に落とし、技術系の書籍をを出されている出版社さんに持ち込みをしようと画策していました。
そんなとき、今回の版元であるソーテック社さんの編集の方から打診をいただきました。きっかけは、このラボブログだということでした。たしかに私はOpenSocialアプリを作るにあたり、さまざまなメモ書きや情報収集をこのブログ上で展開してきましたが、まさか著者としての期待をかけられるほどのものではないと思っていたので、正直とても驚きました。しかし、タイミング的にもとてもよいお話だったので、ありがたく一緒に企画を進めさせていただくことになりました。それまでの「下積み」はおよそ一年ちょっとありましたから、今思い出しても、奇跡のようなタイミングだったと思います。
1.ウェブと紙の違いに悩む初稿期間
さて、書き始めたはいいものの、数百ページに及ぶ原稿をまとめる術がわかりません。これまでのブログエントリはせいぜい1000文字に収まるかどうかということで、いわば800m走のようなものでした。短ければより短距離を突っ走ればなんとかなりましたし、あとからいくらでも修正することができました。
しかし紙媒体の原稿となると、そこから一気にフルマラソンの42.195キロを走らなければいけなくなります。しかも、後ろを振り返ることはできません。最初から最後まで一気通貫で、読者の歩調に合わせるかたちでひとつひとつの内容を説明していかなくてはなりません。書籍の種類としても「逆引き辞典」みたいなリファレンス系ではないので、情報の格納のしかたもランダムアクセスではなくシーケンシャルにしておかなくてはなりません。最初はこの感覚が全くつかめませんでした。
いまから思えば、よく書けていようと書けていなかろうと、「最初から最後までを順番に書く」ということを大事にしておけばよかったのですが、自分自身の知識が本を書き始めた時点でそこまで体系的になっていなかったこともあり、すべてを見渡した状態で掛けなかったため、ここはやはりとても苦しいことになりました。
さらに指摘されたことは「紙はウェブではない」ということ。それまでブログでは自分の頭での言語化が難しいものはハイパーリンクで外部にリンクを貼ってお茶をにごせていたのですが、紙面ではそれができません。読者と自分の文章が一対一の関係になって、自分の言葉で説明しなければなりません。当然その部分をウェブからコピペすることはできませんので、自分の脳みそからひねりだす必要があります。また、OpenSocial本の先達としては、よういちろうさんの
-Amazon.co.jp: OpenSocial入門 ~ソーシャルアプリケーションの実践開発: 田中 洋一郎: 本 
があります。こちらも本書の参考資料として本書内で挙げてはいますが、言及漏れが無いかどうか確認をしていきながら、文章的な表現を真似してしまうことがないようにできるだけテキスト部分は見ないようにする、という変な努力もしていました(笑)
この初稿に関しては、なんとか誕生日の12/3までにと思っていたのでですが少しこぼれてしまい、たしか12/5くらいに初稿にあたるものを納品したように記憶しています。
2.図とコーディング品質が求められた二稿期間
やっとのことで初稿を入稿したら、あとは編集の方とやっていけるので楽になっていくだけなのかと思っていたら、それは大きな間違いでした。初稿に対して大量の戻しをいただき、主に原稿素材の配置や図による補足などがわかりにくいので、順番を調整したり解説をつけくわける必要が出てきました。
そしてこれも、400ページのフルマラソンです。ブログではサボっていた、平易な言葉での解説や図解による説明の部分を一ページ一ページすすめることになり、その仕事量は初稿と比較しても勝るともおとらない大変さでした。
さらに、このころ本書で使用しているコードの検討会を行いました(寒いなか協力していただいたみなさま、ありがとうございました)。とはいえ、それまで他の人のソースコードを熟読したりペアプログラミングをした経験のあまりなかった自分の、ある種「動けばいいや」的なコードの欠点を様々に指摘されることとなり、可能な限りコード規約にのっとり「こうあるべき」というプログラミングをやりなおさなければなりませんでした。
自分自身が「これでいいや」と思っていたものは実際にはとんでもない書き方であったり、問題をはらんだ部分も多数見つかりました。どこまでやってもやりきれた感じはしませんが、文章での補足もおりまぜながら、これまた半分近くを占めるコードをすべて見直す作業をしなければなりませんでした。
さらに年明けからはその当時の主要親会社のDACに出向することになり、執筆の時間が限られることが想像されたため、年末年始を99%返上して取り組むことになりました。
3.書籍としての構成を意識した最終稿
年明け、予想通りペースダウンしたものの、ある段階でなんとか二稿にあたるものの戻しを行うことになりました。諸々経過は省きますがそのあとの予定から時期を逆算すると、最後にかんたんなチェックを行うだけの、最終稿というフェーズに入ることになりました。
最終稿は、かなり実際の書籍に近いものが上がってきました。今度は一度自分の書いたものを客観的な頭で見直さなければなりません。自分が書いたものですから自分の頭には入りやすいのですが、この段階では自分ではない人が読むという前提で読み直さなければならないので、その部分の切り替えがかなり大変でした。
そしてこれは最終稿の話というわけではないのですが、全般にわたりソーシャルアプリを取り巻く環境はまだまだ黎明期なため、執筆の途中でどんどん事実そのものがかわっていくことがままありました。
たとえば、mixiアプリでいえばホーム画面のアプリガジェットの大きさの変更やアクティビティフィードの変更、プラットフォーム全体でいえばモバゲー・オープン・プラットフォームの段階的な環境公開やGREEのPC/モバイル両対応環境の発表など、本書におさめたいさまざまな内容が毎日出てきました。ここをどう収めるかというのも、執筆期間かなりの課題でした。
また、このころになるとページ数も確定してきてどうしても掲載出来ない部分も発生してくるため、そのあたりが、編集の方とも相談の上いろいろと判断していきました。
4.本を書くことで得られたもの
一冊本を書くということは、自分の想像以上に大変なものでした。てがける際には「修論の三倍くらい大変だと思っていおけばいいよ」といわれていましたが、実際には10倍くらい大変に感じました。
どこまで対応出来ているかは別として、一度送り出してしまえば修正ができないという恐怖感、締め切りがあるということの切迫感、そして自分自身の中にも大きな知識の柱を立てるという大工事が必要でした。
人に教えさせていただくには、まず自分の知識が十分でなければなりません。それまでは思い込みでとらえていたものや、理解しなくてもなんとかなると思っていたものについても厳密に理解をやりなおすことになり、本を書かなければ身につけることができなかったさまざまな知識や経験というものが、確実に得られたように思います。
逆に失ったものといえば、小さな機会と時間とを、あるていど引換にしたという言い方はできるかもしれません。執筆中主に出せたのは、小さな同級生アプリとmixiアプリ検索
くらいのものでした。
その間も世の中ではモバイルアプリやアプリのマネタイズについてどんどん事例が進行しており、そういったものを横で眺めていなければならないのは、なかなか辛い部分もありました。しかし、やはり、トータルでいえば寝食を忘れてひとつのことに取り組めたというのは、本当に得難い経験でした。しかも五ヶ月という長い期間、秋冬春と3つの季節を巡りながら自分のそれまでの一年を総括できることというのは、人生においてもなかなかいい体験だったのではないかと思います。
5.「本」や「書籍」に存在する、否定し難い文化
毎日ウェブ、ウェブと言っていると、本や新聞のような既存のメディアというのはつい距離感を感じしてしまう部分はあるかと思います。しかし、本や新聞をアウトプットする過程には、大人数でひとつのものをつくりあげるための完成されたコラボレーション体制があります。
ウェブでは全部をひとりでやれてしまう部分はありますが、本の場合は自分の書いた文章を第三者の目で見てもらえたり、図をリライトしてもらったり、活字の一文字一文字をきれいに配置してくれたりするわけです。本をだすということを大義名分に、コードレビューをしていただくこともできました。ウェブでも本来同じことができるはずなのに、まだその協力体制というのはそれらのメディアを生み出す工房のレベルに比べれば、まだ誰もがそういった体制でアウトプットを行えるチャンスがないのではないかと思います。
今回はまさに千載一遇のチャンスをいただき、予定より時間はかかったものの5ヶ月間で一定のレベルまでのアウトプットを形にすることが出来そうです。そういったことに関われるのであれば、やはり書籍や出版というのもにのは否定し難い、売るためのノウハウと構造を伴った文化があるのだなぁ、と感じさせられました。
今後出版は電子出版や日経新聞のような既存メディアのデジタル化という方向も強まって来るかと思います。そういったフェーズがきたときに、ここまでの蓄積がスムーズに新しいプラットフォームに移っていったらいいなと思います。
6.これからのこと
これからについては、まず出版までの間、書籍についていろいろな人にクレデンシャルをしてければと思います。もともとは、価格を抑えめにして履歴書替わりの一冊になればいいな、というのが出版の人ともお話をしていたことでした。そんなわけで、個別にメールがいったりすることもあるかもしれませんが、その際はお願いいたします。可能であれば、ぜひイベントなどもやってみたいですね!(なにかあればお声がけください)。
この本をベースに、もういちどアプリづくりに取り組んでもよいと思いますし、どういう形になるかは分かりませんがアプリケーションベンダーとして生計をたてる企業になんらかのかたちで関わってければと思います(必ずしも自分で起業する必要はないかもしれないと思っています)。また、あまりないとは思いますが、本書を起点に何かお話させていただけるようでしたら、スケジュール次第でお伺いできればと思っています。
今年後半については、Facebookの本格進出やGREEプラットフォームの公開など、まだまだソーシャルアプリに関する注目トピックが控えています。また、そもそもの「ウェブのソーシャル化」についても日本ではまだまだ進んでいません。ですので、そのあたりも見越したうえで、これからはじまる楽しい時代に参加をしていければと思います。
最後に:とりあえずAmazonお願いします!
前置きは長くなりましたが、書籍なのでぶっちゃけAmazonお願いします!カートに入れておいていただけるだけでもよいので、ぜひぜひランキングアップにご協力お願いします。
-Amazon.co.jp: mixiアプリをつくろう!OpenSocialで学ぶソーシャルアプリ: 神部 竜二: 本 
ブログ、Twitter、はてなブックマークなどでも拡散にご協力お願いできれば本当にありがたいです。下記に関連エントリも挙げておきますので、こちらも併せてよろしくお願いします!
-2010/4/22にmixiアプリ/OpenSocial本を出すことになりました! ( ラボブログ ) 
-Togetter - まとめ「「mixiアプリをつくろう!OpenSocialで学ぶソーシャルアプリ」Amazon予約開始記念まとめ」 
コメント ( 1 )
おめでとうございます。さすがっすね!
弊社でも購読して二人で拝見しておりますー。
投稿者: twk | 2010年01月26日 18:02
日時: 2010年01月26日 18:02