スパイスラボ神部です。
企業の宣伝でもなく、ECサイトでもなく、着うたダウンロードサイトでもない Web サービスをやっている開発者の皆さん、自分のサービスをどのようなゴールに導くか、思い描けていますか?例えばそのゴールは利用者の幸せだったり、自分の知的好奇心の充足だったりするかもしれません。しかし、Web サイトからの収益化をゴールに見据えている人は、自分のサービスをどのように「お金化」すればいいかというマネタイズの問題にどうしてもつきあたってしまいます。
そんなとき、こちらの マネタイズHacksに参加してきました というエントリを見て、改めてマネタイズについて考えてみようと思いました。
そもそもマネタイズとは
「マネタイズ(monetize)」というのは、少なくとも義務教育で学ぶ言葉ではありません。でも 企業の世界や Web の世界では寧ろキーワードとして使われ、コアのアイディアやシステム設計から、どうやって人間か生活のための共通媒介にしている「お金」を得るかというノウハウの事であり、実績に基づく手法分析だったりするものを指すことになっているようです。
現代社会でお金を稼ぐと言うことは、生きるための糧を購入するための媒介を手に入れるということであり、生活のための安全と安息を確保する手段にもなり、なおかつ人生のやりがいにも通じる雇用も生み出す事になるわけで、Web という新しい分野でのマネタイズを考えるということは社会の新しい循環構造をつくる「ソーシャルデベロップメント」的な作業でもあるわけです。そう考えると、マネタイズは重要な問題です。Web で直接世界を変えることは容易ではないかも知れませんが、Web にお金を媒介させることで、それはすぐさまリアリティを持ったものへと変化するからです。
クリエイターのマネタイズとは?
Web 以外の「クリエイター」たちのマネタイズ手段を考えてみましょう。物作りにまつわるマネタイズはとてもシンプルです。例えばガラス細工や雑貨など、物として目に見えて手に触れられるものは「値札」をつける。これだけでマネタイズ完了です。職人的な技術が施された物体の価値は人々の間に十分行き渡っており、その流通媒体としての「お店」の存在に戸惑う現代人はいないでしょう。「お店」の概念は拡張され、インターネットショッピングといった仮想の店舗ですら「物」に対する価値と貨幣の交換は行われています。あとは、それを投入する量や市場を間違えないことが大事です。
絵画や芸術品という域になると、その作品に制作者の価値が上乗せされてさらに高額で取引される事があったりしますし、物作りの技術だったりすると、製品だけでなくそのノウハウですら商品になりますし、高度な技術を再現し再生産するひとは人間国宝として貴重に扱われることすらあります。これは物体とマネタイズ(お金化というより価値化と表現する方がふさわしいかもしれません)の関係が広く受け入れられている実例と言ってもよいでしょう。
物ではないデジタルデータであったとしても、物として流通する限りそれは変わりません。家庭用・携帯用ゲームやパッケージになっているソフトウェアも、カートリッジやCD・DVDというメディアを媒介にすることで価値をわかりやすく持たせることに成功しています。
Web 開発者にとってのマネタイズとは?
では、Web 開発者にとってのマネタイズについて考えてみましょう。あたりまえですが、あなたのつくった「Web サービス」やというのは、ガラスのコップや映画のDVDのように触ることが出来ません。そうしたパッケージにないものには値札を付けることも出来ません。
ではどうするかというと、こちらのブログエントリ マネタイズとは? で触れられているように、
①広告収入 ②有料課金会員 ③仕組みを外販 の3つが主である
といったもので収益化をはかっていくことになりそうです。
広告収入
これは Web でも説明不要なくらい、価値が共有されている仕組みですね。Google や Yahoo! をはじめ、アフィリエイトのような成果報酬を伴う広告モデルもあります。この価値への信頼感は相当のものがあり、逆に広告を貼っていないサイトでは「なにか別の方法で収益化している怪しいサイトなのでは?」と疑われてしまうくらいです。実は †フェイス女学園† (顔診断サービス) でもそんな風に聞かれたことがありました :D 「どうやって収益化しているの?」と。フェイス女学園はそれ自体は収益化を目指していないので、なんら問題はなかったのですが、広告が貼られていないことが信用を低下させてしまうという、面白い事例だと思います。
しかし、多彩なサイトがある分巨大でないとその収益は微々たるもの。Yahoo! のブラパネみたいなもので強気な商売をするには、それこそ国内 No.1 サイトになるしかありません。これはちょっとハードルが高すぎますね。また多くの人がシェア出来るマネタイズのモデルでもありません。
有料会員課金
これはメジャーではありませんが、非常に理解しやすいマネタイズです。無料会員の中からより強くサイトの魅力や高いサービスを求める会員向けに有料のサービスを行っていくというもの。このモデルは収益性が高い反面、会員には上等なサービスを提供しなければならないために運用コストがかかる可能性があるのが特徴として出てきます。また、同じ事が出来る無料サービスも天敵です。確実な層に確実な額を課金していく、そのモデル作りが非常に大事で、日本では Yahoo! の各種サービスがそれにあたり、たとえばオークションをやりたいがために有料会員になってしまっている人も多いのではないでしょうか。
しかしそれ以外の部分では無料で使える代替サービスが増えてしまったため、現在 Yahoo! としてのモデルは結構崩れている可能性があるのではないかと思います。ただし、一度大量の会員を集めてしまえば、近頃行われたサービス料金の値上げのように一気に収益を改善させることができるので、その点広告に比べては有利なモデルとも言えます。
仕組みを外販
この仕組みについてはちょっとわかりにくいですが、技術を開発しながらのマネタイズが可能なところに特徴があるでしょう。OEMといえばもっとすんなりわかりやすくなるはずですが kizasi.jp のようなブログ分析の仕組みを特定サービス向けにカスタマイズして販売したりすることもあるでしょうし、Amazon EC2 & Amazon S3 のように個人すら対象にした外販サービスというのもあります。もっとメタな考えかたをするのならば、技術を持った企業が、より大きな企業に買収、Buy Out されることも大きく見ればこのひとつになってくるのではないでしょうか。
あまり身近な例ではないでしょうが、ウノウラボが「映画生活」をぴあ株式会社への事業譲渡するといった
「つくっては売る」というモデルでやっているところもあるようです。
参考:はてなブックマーク - ウノウからのお知らせ: 「映画生活」のぴあ株式会社への事業譲渡につきまして
では、どのようにマネタイズすべきか?
では、自分を一開発者として考えた場合、どのようにマネタイズを実施すべきでしょうか。この場合、開発者だけではなく、サービス提供の運営責任者でもあり、企画を進めていくプロデューサーであることも忘れてはいけません。自分の判断がサービスをマネタイズ出来るか否かという部分に関わってくるのですから。
ここで、Cookpad でコミュニティについて勉強してきました (ラボブログ) というエントリで触れきれなかった、クックパッド佐野社長の言っていた「ものづくり三原則」について、はてブのコメントでフォローいただきましたのでかんたんに見直してみたいと思います。
1.無言実行
ユーザーニーズに先回りして、あたりまえのことはあたりまえにやり、言われる前に完了すると言うこと・・・だった気がします。
Web サービスに適用すると、サイト構造やセキュリティなど、あるべきものをあるべきところに、ということになるでしょうか。
2.無言語化
言葉や説明なくても通じるものをつくる・・だった気がします。
Web サービスに適用すると、国際化しろってことではなく、面白さの本質や使いやすさについては誰もが納得できる強い物にしておけ、ってことになるでしょうか。
3.値段をつける
最期にそのままずばりのマネタイズの話が出てきました。
Web サービスについてはこれは結構忘れがちなことです。難しいことではないはずです。少なくとも原価としてドメイン費用やサーバ代といった固定費がありますし、コンセプトの企画費やアートデザイン、サイト構造のデザイン、コーディングの実装プログラミングの実装という部分から必要だったコストを振り返ることができます。
Web の場合難しいのは、物として個別にシリアライズしたものを販売するわけではないので、たんに原価を上回る価格をつけただけでは意味のある収益化につながらないだけでなく、書いてもつかない結果に陥ってしまうかもしれません。
つまり、つくる際にかけたコストとは違う「値段」をつけて売りさばかなければなりません。値段だけでなく、売る相手や売る期間も大事になってくるでしょう。売り方によっては、これまでの法律では認められない販売のされ方となることもあるでしょう。それだけに、Web のマネタイズというのは難しいのかも知れません。
マネタイズについて、ブレストしてみよう
難しいからといって、手をこまねいていても進みません。深く考えたり、実行に移したりするための第一歩として、まずはブレストをしてみようと思います。
小規模でも収益化しやすいのは有料課金
最初に環境をつくるのは大変ですが、ターゲットさえ間違えなければ損益分岐を見積もりやすいのが有料課金サービス。テーマとターゲットと課金方法の組み合わせを考えることでこれは非常に動きやすくなります。
例えば
「プロのゴルフレッスンを」「ゴルフプレイヤーに」「携帯コンテンツとして売る」
「便利な渋滞情報を」「カードライバーに」「カーナビ経由で売る」
「新しい企画書のアイディアを」「サラリーマン会員に」「有料会員特典として売る」
などなど。
成功するかどうかは企画次第なのでそこからがまた難しいところですが、とりあえずマネタイズに成功できるか出来ないかは、はっきり結果を出しやすいでしょう。
「コメント共有付きの動画を」「ネットユーザの中でもコアな層に」「優先権のある有料会員として売る」を実践しているニコニコ動画も、広告モデルなどとの合わせ技で、来年夏には収益化を成功させるようです。多くの人が目撃したであろうニコニコ動画の開始から現在までは、まさにスモールスタートで収益化を成功させた具体例なのかも知れません。
マイナーでもPVさえあれば広告でやっていける?
たとえばPCを主体としてネットユーザーには知られていなくても、携帯サイトの世界で人気があればそこから広告費に転化させる事も出来るでしょう。そういうPCユーザに知られていない、しかし確実にマネタイズを成功させている携帯サイトはたくさんあるようです。
携帯サイトの「モバゲータウン」も、有名だから収益が成り立っているのではなく、収益がなりたったからこそ有名になったとも言えます。
こういうパターンでは狙って爆発的普及したというわけではなく、サイトをきちんとやっていたらあるとき突然ブレイクした、というパターンも多いです。戦略的にやるにはこの方法は向かないのかも知れません。
RSS 広告も今ならあり?
Web サービスにとって、大事なのはデータベースです。実はサイトにはあまりアクセスせず、その新着のほとばしりだけを集めた RSS だけをコンテンツとして持ち帰る人も多く、フィードを吐いているブログやニュースサイトであれば、サイトには二度と訪問せずにそのサイトの恩恵を受けているケースも多いのではないでしょうか。
そうなると、その RSS 自体をマネタイズしないと機会損失となります。RSS広告社 など様々な企業によって提供されている RSS 広告を盛り込むというのは、忘れられがちですが重要なマネタイズなのではないでしょうか。
とりあえずのまとめ
こうして考えてみると、Web サービスを開発するにあたり、マネタイズという側面が書けているとしくみとしても足りない部分があることに気づくような気がします。収益化だけではなくコミュニケーションの点も同時に見直しながら、自分がいままでつくってきたサービスを見直す必要もあるのではないでしょうか。
スパイスボックスのラボでつくってきたサービスの中にも、見直せば収益化出来るサービスももしかしたらあるのかもしれません。
みなさんもこれまで自分がつくってきたサイトを、マネタイズという角度でもういちど見直してみてはどうでしょうか。また、すでにマネタイズを実現しているのなら、さらにその収益構造を改善する方法がないかどうか考えてみるのは、きっと前向きなことなはずです。
暴騰でも触れましたように、「お金化」を実現することは、いっきに現実世界へと介在する力をもたらしますし、下手すれば自分だけではなく仲間や家族を含めた他人の人生にも関わってきます。出発点が自分の制作物で、その先に世界が待っているのだとしたら、それはエキサイティングなことではないでしょうか。
このマネタイズ hack はまた開催されると思いますので、次回以降はぜひ参加したいと強く希望しておこうと思います。抽選に漏れたら、自分たちで開催するのもありですね。
おまけ
ここまで読んでもなんかよくわからない、というひとは、例えば 「サイトにつけられたはてブユーザ数が、実は数×1000円の利益になるはずだった」などと考えてみてください。
本来なら PV なり UV なり滞在時間、訪問ユーザ層をみながら考えるべき内容ですが、被ブックマーク数も一種の指標としてマネタイズの機会ととらえてみてはどうでしょうか。
もしかしたらそれだけの価値をみすみす見逃し、リアルな世界にに介入できるチャンスを逃しているのかも知れない、と。
関連リンク
まだまだ第一回の考察なので、不十分なところは多々ある気がします。今後の考察に役立ちそうなエントリを眺めながら、頭を柔らかくしておこうと思います。
-番外編 - livedoor ディレクター Blog(ブログ)・・・上記で既出のリンクですが、関連のエントリは必読かも知れません。
-ブログビジネスファンド | 【web2.0】起業家編・最初にマネタイズありき
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