Photo by Ryuji Kanbe
スパイスラボ神部です。
今日はせっかくの日曜日ですが、ベルサール神保町で開催されている Firefox Developers Conference 2008 に参加しています。Firefox は普段自分が道具として使っている仕事には欠かせないツールであり、また今回は海外の Mozilla People にお金を払わずに会えるという機会です(このサーチャージの高いご時世 Mozilla Japan か Mozilla Foundation が航空券と滞在費をもってくれるというのはすごいことですね)
Firefox といえば、Firefox 3 のリリース以降はあまり話題になることがないので、この機会に Mozilla Firefox に関する現状をごく薄く見回してみようと思います。
Firefox は本当に普及している?
私が今在籍しているスパイスボックスという会社は、さすがに Web 広告・制作プロデュースというだけあって Firefox を知らない人はほぼいません。みんなバリバリ tecky な人でもないですが「押さえておくべきもの」としての認識はありますし、日常の道具として使っている人もいます(使っていない人も多いですが)。社内の仕組みはグループ企業の DAC との共通部分も多いので、そちらは若干 Firefox フレンドリーではないところもありますが。
まだまだ一般層にリーチしない Firefox という道具
では、家族や友達、道を歩いている人にとってはどうでしょう。私は個人的な興味で Firefox について知っているか訪ねてみることがありますが、そういう場合たいていの答えは「No」です。いいとこ「聞いたことがある」という状態。もしかしたら、普段使っていてもそれが Firefox と気づいていない可能性すらあります。
相変わらず、というか結局のところ Web ブラウザというのは空気である、すなわち インターネットを使って Web を楽しむための手段であって、名前を覚えて愛するほどの対象ではないのです。それは Internet Explorer と同じシェアに近づけば近づくほど傾向として顕著になっていくかもしれません。
つい機能も、今週の予定について雑談した英会話の先生に Firefox について説明する必要がありました(もちろん相手が Firefox について知らなかったからです)。そこでコンピューターやブラウザの歴史についてお話しても相手には伝わらないと思ったので、私は次のように説明しました。
「例えば字を書くとき、鉛筆を使えば十分ですが、シャープペンを使えばより便利で使いやすいですよね。Firefox とは便利なシャープペンシルみたいなものなんです。」
Google Chrome というライバルの登場
Firefox はバージョン 1.0 の登場以降、それを欲する人たちには爆発的普及を果たしてきました。IE に辟易していたユーザから一定のシェアを奪いましたし、その前進である Mozilla Seamonkey のシェアもそっくり奪う形になりました。
Firefox 2 以降は欧米を中心にポスト Internet Explorer としての Web ブラウザのポジションを確立し、過ごしやすい世界的な寡占状態という状況に入り技術的革新によってバックエンドを描き直された Firefox 3 のリリースを経てこの先も安泰という空気が流れはじめていました。
しかにそこにまさに隕石のように現れたのが Google Chrome です。Mozilla や Firefox は Microsoft という一企業によって独占的に開発されたブラウザをオープンソースというシステムで打破することでイノベーションをもたらしましたが、Google Chrome はこのオープンソースの仕組みを結果的に攻撃することになりました。
Google Chrome はオープンソースとは逆説的に「たとえ一企業であっても、モダンで高い技術レベルを持つ企業であれば、国際化されたユーザビリティの高い Web ブラウザを提供することが出来る」ということを、プロダクトでもって証明してしまったのです。
実際に Google Chrome に飛びついたのは、Firefox を好むようなイノベーションが好きなユーザたちでした。リリースして一ヶ月後、Google Chromeのシェアは約4%。Firefox からの乗り換えユーザではないか という見方もあるようです(「Google Chrome」のシェアは1日で1%に、Firefoxからの乗り換えか?:ニュース)
さらに、「IE ではできないけれども Firefox が可能にしてくれること」として象徴的だった Greasemonkey にも、Google Chrome が対応をはじめました。まだまだ不具合もあるようですが、Firefox と同じ事は誰も出来ないというわけではないということを、こちらでも証明する形になっています(私も最初にこのニュースを見たときはちょっとした衝撃を受けました)。
モバイル版 Firefox の出番はあるか
本日開催されている Firefox Developers Conference 2008 でも冒頭で Firefox Mobile のセッションがありました。実際に Nokia 端末上で動いている、ちょっと遅いですがちゃんと動いているホットモックも用意され、休憩時間は多くの人が集まり盛り上がりました。こちらで図示されているような小さなものではなく、ライブドアリーダーが動くくらいのレベルのものです。
しかし、このモバイル版 Firefox ははたして日本市場での出番はあるのでしょうか?たしかに
日本でも NTT DoCoMo をはじめどこまで本気かわからないものスマートフォン市場が用意はされています。ところがいわゆる日本のケータイユーザが利用しているのは NetFront 製の iモードブラウザであったり EZ ブラウザだったりするわけです。スマートフォン市場にもたとえば Windows Mobile や WILLCOM の PHS であったりすれば Opera ががっちりシェアを握っています。
一般ユーザ層(というかそれらをがっちりつかんでいるキャリア)が Firefox Mobile を相手にしてくれなければそういった PDA ライクなガジェットを狙っていくしかないのですが、そこに今から参入していく市場はあるのでしょうか?しかし、こちらは逆にチャレンジャーであるので思い切ったことができるはずです。既存のベンダーが出来ない価値を示し、切り開いていけるかどうかは今後見守っていきたいと思います。
また、Wii や DS、PSP といった普及台数の多いエンターテイメント機器にもおおむね Opera が使われていることも忘れてはいけません。あまりにも強い Opera というデファクトスタンダードに立ち向かうためには、もはや人脈レベルからアクションを始めることも必要とされるのかも知れません。
Thiunderbird はどうなった?
Firefox は華々しくバージョン3がリリースされたのに、いつまで経ってもバージョン2のままの Thunderbird。個人的には非常に使い倒しているのですが、2 まで継続されてきた同時リリースの体勢が崩れてしまい、今後どうなるのかが非常に心配なところです。個人的には今のままで機能もほぼ満足なのですが、使いやすさに貪欲なユーザにはまだまだ不十分で、改善の余地はあることでしょう。まずは、ざっと現況を追ってみようと思います。
プロジェクトからスピンアウトした Thnderbird
昨年夏の段階で、既に Mozilla Foundation は Thunderbirdのスピンアウトを検討していました。3つあった選択肢のうち、最終的には Mozilla、メールとコミュニケーションに特化した新組織を設立 して開発をすすめるということで、今も粛々と開発は続けられているようです。
ここでは簡単にその後の動きを追ってみましょう。
-Mozilla Links 日本語版: Thunderbird 3 はカレンダーなどを搭載予定・・・Thunderbird 3 のロードマップについて
-Mozilla Links 日本語版: Thunderbird 3 (a.k.a Shredder) Alpha 1 ファーストレビュー・・・Alpha 1 は 2008 年 5 月にリリース
-Shredder Alpha 2 リリース - えむもじら・・・どうやら開発コードは Shredder という名前のようです。
-Shredder Alpha 3 リリース - えむもじら・・・一ヶ月前には Alpha 3 がリリースされたようです。ロードマップが変更になり、ベータからアルファへ後退 Computerworld.jpするなどあり心配もされていたようです。
Thunderbird よりも先にスピンアウトした Nvu およびその後継の KompoZer も元気な話題を聞きませんね。個人的にはとても期待しているプロジェクトなのですが…。
Firefox がこの先生きのこるには
ちょっと話がそれましたが、ここで本筋に戻って Firefox のこれからについて考察してみようと思います。
Firefox がほんとうに市民権を得るためには
これまでの数年間で、Firefox とオープンソースのすごさは本当に世界を席巻しました。しかし、道行く人が気にとめるほどのトピックではないことも確かです。冒頭で鉛筆よりもシャープペンシルのように使いやすいというたとえを出しましたが、鉛筆でいいひとには鉛筆でいいのもたしかです。しかし本当は道具の革新というのは、羽根ペンが万年筆 に変わったときのような劇的なイノベーションがなくてはいけないはずです。
オープンソースのパワーが次のイノベーションが生む前に、優秀な Google という技術工場が同じレベルまで追いついてきて、しかも実用に耐えるという自体になっています。逆のように感じられるかもしれませんが、将来一般層にリーチするために今こそ基礎的な技術革新に力を注ぎ、コンピューティングやウェブの利用に大きな影響を与える変革をもたらすべきではないでしょうか。
また、今のウェブはストレージとかわらないので、収益をインフラにつぎ込んで、小さなものであってもクラウド化するしくみを持つべきではないかと思います。Google のようになんでも持ってくれなくても、P2Pでここのコンピュータがつながる形でもよいと思います。
成熟してきたオープンソースコミュニティとどうつきあうか
さまざまなオープンソースコミュニティは、多数のボランティアと限られた数のコアメンバーによって成り立っています。しかし、Mozilla は検索ウインドウをマネタイズし、そのシェアを上げることでけして小さくはない収益を上げているのも事実です。
この域に達したオープンソースコミュニティは、従来のような手作り感を大事にすることも確かですが、もっとオープンソースに貢献してくれているコミュニティのメンバーとも、お金やビジネスモデルといった部分を積極的に共有すべきではないでしょうか。Google のように やりすぎな程の福利厚生を伴って社員をひきとめるひつようはないですが、例えばどのように組織が維持されているかという基本的なところから、自分たちがどのように夢を持ち、世界のどの部分を変えて行きたいかという大きな夢 "Big Dream" をシェアすることが必要なのではないかと思います。
おかしな話ですが、いろいろな閉塞感から10年前は「打倒 Micorosoft」というのがスローガンとして成り立っていたのも確かです。しかし今や Google によって打倒されたのか、彼らが自滅していったのか分かりませんがそれでは今や人の心はまったく動かないでしょう。
だからこそ今ウェブや現実社会に横たわっている問題をみんなで共有し、Firefox やオープンソースというスタイルを通じて変えて行くかという意識の衝突と共有が必要なのではないかとも思うのです。
10年以上も昔のことになりますが、かつて Firefox の祖先の Netscape は たしかに世界を変えました。その DNA を眠らせることなく、再び新しい価値観を生み出していってほしいものです。
カンファレンスについてもかんたんに
Firefox Developers Conference についてもかんたんに。
Ubiquity・・・素晴らしいインターフェースだけど、完全にギークツールであるのも確か。コンピューターを使っているにもかかわらず日常的にコマンドを叩く人がどれだけいるかを冷静に考えたとしたら、拡張機能レベルに仕上げてボタン一発でカスタムプリント、とかメールとかそういう風にしないと使ってはもらえないとは思います。ただし、ブラウザの各機能が連携して可能になることを実験しデモするためには素晴らしいツールなのではないでしょうか。
また、気になることがあれば追記します。
(追記)
このエントリの途中で
今のウェブはストレージとかわらないので、収益をインフラにつぎ込んで、小さなものであってもクラウド化するしくみを持つべきではないかと思います
なんてことを書いたのですが、その後のセッション でまさしくそんなオンラインストレージ&クラウドな Mozilla のサービス、Weave & Fennec: の紹介がありびっくりしましたw うーん、やっぱちゃんと先を考えているひとたちはやることが早いなぁ。巨大なストレージではなくてもいいから、とにかくクラウドを持っておくという発言もあり、納得&賛成です。
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