ラボ神部です。
先週末、社内勉強会でカンヌ国際広告祭についての知識共有の機会がありました。カンヌ国際広告祭について改めて簡単に説明すると、Wikipedia に書かれている通り カンヌ国際広告祭は、 One Show、クリオ賞と並び、世界3大広告賞のひとつです。カンヌ国際映画祭 と紛らわしいですが、当時映画館でのコマーシャルを行った業界団体がこの国際映画界とあわせて広告祭を開催しはじめたのがきっかけで、先に述べたとおり今では3大広告賞を排出するイベントとしてまで認知されています。
そんな三大広告賞を総なめしたのは、なんとブログパーツでした。その受賞したブログパーツは多くの人がご存じのユニクロックです(ユニクロがカンヌ国際広告祭で受賞、世界三大広告賞を総なめ:MarkeZine(マーケジン))。
このブログパーツはれっきとした広告でもありますが、Adobe の Flash 技術を使ったブログパーツと言ってしまえばそれまでです。基盤となっている技術は想像もつかないようなものでもなければオープンソースなわけでもないプロプライエタリなものです。ブログに貼り付けた人は単に面白いガジェットとしてしか意識していなかったかもしれません。
しかし広告として見たときには、どうやらこれが広告と技術と芸術表現がすばらしくうまく融合した、今年あるいはこれからしばらくの広告を象徴するようなすばらしいものとして評価されたようなのです。ユニクロという企業の商品をアピールするという「目的」、ブログパーツという世界的にはまだ珍しかった「手段」、そして女性とダンスと時計という「チョイス」。これらがすべて美しく混ざり合い、造語するならば広告美というものでも作り上げたのでしょうか?舞台裏については クリエイティブのタテ軸ヨコ軸(8)「ユニクロック」/ JDN[デザインのお仕事]特集記事 という取材記事が面白いと思います。
上記の取材にはクリエイティブディレクター(CD)という職業が登場します。予算を掛けないウェブの世界ではなじみがありませんが(もちろん予算をかけるウェブの世界ではおなじみでしょう)、名前の通り広告の作品としてのコンセプトを決定し、それを Web の技術に落とし込み、制作費や人的リソースのブッキングを含めてひとつの作品を作るためにまとめあげていく役割を持つようです。今この役割を果たす人が、広告主からのリクエストをかなえるために表現手段として手を伸ばしているもののひとつがウェブの技術で、ユニクロックはまさにその要求したものを完全に満たす手段となったわけです。
さて一方で、Web からは広告はどんなかたちに見えているでしょうか。広告はコンテンツ重視のウェブの中で、時にはノイズと見なされスクリプトにより自動削除されるという嫌われようです。Web のサービスの中にも、広告の宣伝効果や表現手段をもっと広めていこうというコンセプトで作られたものは多いと言えないでしょう。そんな中どういう形であれ自分はウェブの上で何らかのシステムやサービスをつくりあげるWebの開発者だと認識して日々精進にいそしんでいる人たちは、それぞれ自分のポリシーに置いて「みんなの役に立つものをつくりたい」とか「自分のつくったものをたくさんの人に使って欲しい」ということを考えているかもしれません。しかしそれを広告というプラットフォームに乗せて実行しようという発想は、なかなか持たないのではないでしょうか。
改めて評価すると広告というのは歴史の長いプリミティブなメッセージです。強いメッセージであり、国境はわりと軽く飛び越え、広告主というある種の神がいることで構成すべきコンテンツに空気や重力まで備えており、腕をふるって作り上げるには格好の素材であるのは間違いありません。クリエイティブなことをやりたいと考えている人であれば、広告というものに関心を持たないのは実に勿体ないこと・・・なのかもしれません。
今回のカンヌ広告祭の報告を聞いてみて、私は例えばすばらしい作品を作ってきたクリエイティブディレクターと、すばらしいウェブサービスを作ってきた開発者がよい巡り会いをする機会が増えることを願うようになりました。クリエイティブディレクターにとっては、もっともっと技術の奥深くに突っ込んでいって表現の幅を広められる機会になるし、Web の開発者にとってはWeb業界でのステータスとか、ブログでの評判とか以外のまた別の出口を開くことの出来るチャンスになるからです。
Web の開発者にとってディレクターと組んで仕事をすること、言い換えれば創造的な作業に携わることは、しばしば合理的な理由や、論理的に納得のいかない方向転換に巻き込まれる機会に恵まれることになるでしょう。それでもぶつかりあいながら共同作業を完遂することによって、Web の価値観だけではできなかったような何かができあがることを体験できるような気がするのです(私自身、小規模ではありますが フェイス女学園 で似たような経験をしました)。
ですから、もし今 Web でサービスをばりばり開発していて、でもなんか物足りないなーとか、もっと一気に世界にジャンプするようなことをやってみたい!と思う人は、思い切って広告業界に打診してみるのも、一つのチャンスになるかもしれません。これまでは Flash クリエイターがその手足となってその作品を作り上げる機会が多かったですが、たとえば広告がコンテンツからサービスに転化するような将来が来たとき、ユニクロックのようにネットワークを通じて共有されるのが当たり前になったとき、そこに求められる人材の一つとして、Web の開発者もノミネートされるのではないかと思います(個人的には、Web の開発者からクリエイティブディレクターに転身するような奇跡が目撃出来れば嬉しいと思いますが)。
それから、今回の共有の機会で今更知ったのが "BIG IDEA" というキーワード。その示すところは正確にはわかりませんが、その時々で創造的なイノベーションをもたらすすばらしいアイディア、ブレイクスルーをもたらすやり方のことを述べています。これは、広告の業界に限らず、あらゆる創造的なものを作るひとたちが共有出来るものなのではないでしょうか。
今回の社内の発表資料は共有出来ませんが、ブログで似たような報告をまとめているブログがありました。YouTube にあがっているビデオも含め参考になりますのでぜひご覧になってみてください。
-カンヌ広告祭体験記 - TRAVEL HETEROPIAー広告とアートの間で
別に予算が大きいからと言って、魂を売り渡さなければいけないなどということではないし、広告だからアサマしいなんてことはありません。純粋に楽しく創造的な活動を、心臓を握りつぶりされるようなプレッシャーの中でものを作っていくという場面に遭遇できるかもしれない貴重な機会に飛び込む機会があるのなら、ぜひそうするべきだと思います。
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