広告の画像加工が禁止に? - Photoshop 禁止法
ラボ神部です。
みなさまは、次の国会で衆議院に提出されようとしている「改正広告法」についてご存じでしょうか。オンライン・オフラインの広告についての様々な補足規定が盛り込まれた法案で野党よって提出されているものですが、この法案は「Photoshop 禁止法」として物議を醸しています。もしこの法案が可決されれば、今みなさんが雑誌や街頭、そしてインターネットで見かけているほとんどの広告がなくなってしまうかもしれません。
そもそもこの法案が「Photoshop 禁止法」と言われるゆえんは、この法案の補足規定に次のような項目が盛り込まれていることです。
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(7.広告における画像表現に対する規制)
【特定加工広告であることの表示】
・事業者は、特定加工広告を掲示するに当たっては、当該特定化広告に省令で定めるところにより、特定加工広告であることを示す文字を表示しなければならないものとする。
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では、特定加工広告とはなんでしょうか。この解釈を巡って大きな物議を醸しているのは、まさにこの部分です。「特定加工広告の定義」の項目には次のような記載があります。
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一
この法律において、「特定加工広告」とは広告内に登場する人物に対して、なんらかの視覚的処理を施した図画を使用して広告するものをいうものとする。
二
対象となる広告は、紙媒体、オンライン媒体を問わず、あらゆる視覚的表現を伴う、対象物が転写された広告を挿すものとする
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つまり、特に人物写真について過剰な修正を行うことを規制する法案であり、これを厳密に解釈すると、人物の写真素材に対する規制が大変厳しくなり、たとえば Photoshop でのフォトレタッチが行われた素材などは使用できなくなる恐れがあるのです。
たとえば次のエントリでも紹介するように、Photoshop を使って対象となる人物の印象を、その身体的特徴を取り除くことにより向上させるという技術は今や一般的になっています。
-Photoshopを使って、シミ、そばかす、しわを取り除くチュートリアル 解説編 - DesignWalker
今では写真にとどまらず、動画の1フレーム1フレームに至るまでその修正は施されており、私たちがディスプレイを通じて見ている人物は実は大げさに言えば「どこにも存在しない」人間なのです。広告の受け手側としても、それが加工されたものである可能性を無意識下に感じつつも、あたかもそこに「シミもシワもない、パーフェクトな人物」がそこにいるものと錯覚してしまう側面があります。
そんな中2006年の建築物における構造計算書偽造問題や、2007年の食品衛生法に違反する産地偽装、賞味期限切れ商品の再利用などによる問題を受け、全般的により厳密に設計・生産時の一次情報についての規制の見直しが徹底的に行われることになり得、その流れを受けてこれまで「表現の自由」に大きく守られてきた広告表現にもかかわるこのような法案の提出が検討されるに至っているのです。
この法案が提出され可決されたとしたら、たとえば次のような表示を多くの広告に見かけることになるかもしれません。
「この広告に掲載されている人物は、本人の現在の外観と異なることがあります。人物は画像加工による補正を行われている場合があります。」
もし、この規定が守られなかった場合、120万円以下の罰金が定められており、その罰則の対象は広告主だけでなくエージェンシーや制作事務所にも及ぶとされ、その対象の範囲の大きさから今後は「Photoshop などレタッチを行うソフトウェアの使用は一切行えないのではないか」という戦々恐々とした思いがクリエイター広がっています。
一方でこの法律の対象範囲が人物であることも様々な論議を呼んでいます。CGやイラストはどうなのかとか、過去の写真をきれいに見えるように修正されることは可能なのか、人間に見えるロボットはどうなのか、など。下記に法案を審議する小委員会に寄せられた質問と回答の一部を抜粋しておきます。
Q.CGやイラストで人物を表現する場合は?
→写真レベルの写実的なものはNG、本人の身体的特徴が欠如または添加されている場合には特定加工広告であることを示す文字を表示することが望ましい
Q.複数の人物を合成した人物を使用する場合は?
→合成される段階で画像の修正にあたると見なされるため、当該の表示が行われることが望ましい
Q.過去の写真を使用する場合は
→過去の人物写真を利用する際は、その身体的特徴を保全した状態で利用されることが担保される。ただし、これは写真が印刷された紙写真であるときのみに限り、人物の形象を取り込んで新たに人物のように見せる場合には表示が望ましい
Q.映画や雑誌、TV番組にもこの法律は適用されるのか?
映画や雑誌、TV番組のコンテンツ部分に於いてはこの法律は適用されない。ただし、コンテンツが広告と一体化している場合には、適切な表示が行われるべきと考える
Q.人間ではなく、ロボットの場合は?
人間に見えるロボットでも、人間のように見せることを意図した内容である場合には、当該の条項に違反しないよう配慮が行われることが期待される。本件に関して、現在委員会ではガイドラインを策定中である。
個人的にはこれらの条項を見る限り、この法案の必要性に若干の疑問を感じるとともに、広告表現における人物加工がいつのまにか当たり前のものになっていることを実感しました。実際に広告に使われている写真の修正率がわかったりしたら、結構おもしろいかもしれません:-D しかし実業にかかわってくるとなると、これはなかなか深刻な問題です。
一部広告制作会社では、この法律に抵触しないよう、CGにより「どこにもいない人物」を合成できる、いわば「人物肖像版初音ミク」の開発に取り組み、広告制作に影響が出ないように先手を打っているとも聞きます。しかし実際の運用がどの程度になるかにより、やはり既存の各種広告、インターネット広告などに大きな影響を及ぼす可能性があることは間違いありません。
幸いにも現在この法案は委員会にて審議中で、下記にてパブリックコメントを受付中です。広告業に携わっている皆様、ネット上の表現活動に敏感な皆様、そして Adobe 社員の皆様(笑)、ぜひ下記よりパブリックコメントをお寄せいただければと思います。
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