昨日、「モバイルアドフォーラム 2008」というセミナーに参加してきました。モバイル3キャリア共通のトップメニュー広告商品など発表され華々しかったのですが、同時に開催された公演で「エンゲージメント」というキーワードに遭遇。印象深かったので、これらを少し噛み砕いてみようと思います。
エンゲージメント(engagement)とはかんたんに言えば、企業と顧客の垣根を越えた「家族のような一生の付き合い」の関係構築を目指すもので、一期一会の消費行動ではなく、出会ってから一生おつきあいしつづけるというまさにエンゲージを結ぶための重要な要素です。
このエンゲージメントという概念の消化のために、Yahoo!、Google、YouTube、ニコニコ動画などを考えてみましたが、ある理由からここでは株式会社はてなの各サービスを評価してみようと思います。
エンゲージメントは、下記の5要素からなるそうです
・エンタテイメント
・パーティシペイト
・リアル
・インサイト
・ソーシャル・テーマ
従いまして、これらのテーマについて「はてな」の各サービスはエンゲージメントという側面から見た場合にどれだけのことを達成しており、どれだけのことを達成していないかということを考えていこうと思います。
▼エンタテイメント
いきなり最初からこき下ろすのもなんですが「はてな」の各サービスはこの点においては内向きです。テキストが主体で、ターゲットとなる年齢層を特に定めているわけでもないのに結果的に特定のPCマニアのような層が集まっている(または集まっているという印象がもたれている)ため、はてなそれ自体が外向きのエンタテイメント要素を持っているとは言えないでしょう。どこにも負けない奇抜な企画をやりきったというエクスペリエンスを顧客との間で共有したという記憶もありません。
▼パーティシペイト
ユーザが商品作りやサービス作りに参加し、コミットしていくこと。この点でははてなはかなりのポイントを獲得できるように感じます。利用者が自由にキーワードを定義できる「はてなダイアリーキーワード」では210,840語のキーワードが作成されていますし、はてなブックマークでは18,575,686という、1800万を超えるブックマークが登録され、これはすべてユーザの参加によってつくられたものであると考えると、「ユーザに参加させる」という側面でのはてなのエンゲージメントは成功しているといえます。
▼リアル
現実の世界と結びついたアクション。この点においても一見はてなは弱そうですが、『現代用語の基礎知識2008』に掲載されたのはリアル連動の例としてはよい解なのではないでしょうか。Wikipedia ほどではないものの集合知のアーキテクチャを持ったはてなが、Wikipedia から新聞・雑誌の紙媒体に密かに引用される事例が相次ぐ中、社会と衝突しないかたちでリアルに進出することは、集合知の構成者たる顧客にとって、モチベーションを上げる要素のひとつとなるかもしれません。
▼インサイト
insight を真正面から辞書で引くと、洞察力であるとかものごとの本質といった意味になりますが、Engagement の概念ではこれは「心のツボ」と表現されるようです。2007年に開催されたカンヌのグランプリでは「広告が美意識を歪めている」という Dove の広告が、自己批判的ながら本質をついたものとしてグランプリをとったということです。こと「はてな」の周辺サービスではこの点で優れたものが多く、「はてなブックマーク」においてはブログエントリなどへのブックマークコメントが実に簡潔で、多数コメントがついていた場合そのうちのいくつかには心のツボを押される共感できるもの、つまり「インサイト」を内包しているものが含まれていることが多いと感じています。そういった「そう、そう」という気持ちを後押しする仕組みのひとつとしては、最近加わった「はてなスター」も同様の性質を備えており、ある種ぶっちゃけた空気が、顧客が長くはてなのサービスと使っていくための Engagement を構成しているといえます。
▼ソーシャル・テーマ
小さなコミュニティで盛り上がるだけではなく、その土台である社会的なテーマにも取り組んでいこうという姿勢。これに関して、はてなはとりわけ強いというわけではありません。はてなダイアリーを例にとっても、多くの社会的なテーマに切り込んでいるブログは、特段はてなにばかり集中しているわけでもなく、そういったことを支援する特別な仕組みを持っているわけでもありません。これはむしろブログというメディアの持つ要素から来るものでしょう。特に競合と比べて飛び出ている点は、全サーバ稼働分の電力を風力発電へ切り替えた というエピソードくらいでしょうか。
▼総括
今回は「はてな」の各サービスを例にとりあげ、Engagement という切り口でごく簡単に、「企業と顧客の長い付き合い」をつなぎとめる要素について考えてみました。結果、パーティシペイトとインサイトに強く、エンタテイメント、リアル、ソーシャルテーマにはやや弱いという側面が見えました。これを前向きにとらえるならば、もっと現実世界の活動と近づいた、ユーザが思わずニコニコしてしまうようなサービスに近づけていくことで、はてなと顧客の顧客はより長く続くようになるのかもしれません。
また今回は企業側から顧客とのつきあいを考えるという戦略ですが、逆に顧客がどんなサービスを長く使っていくべきか、という側面からも、また考えなおす機会を持ってみたいと考えています。
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